学芸員になるには大学院進学(院進)必須かという質問にお答えします

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今回はこれから学芸員を進路の一つとして検討している中高生・大学一二年生を対象にタイトルにある質問について答えをまとめてみました。

周りに学部卒で学芸員になった人はいる?修士卒以上が求められる理由は?といった疑問にお答えしていきたいと思います。

一点注意していただきたいのは、管理人は歴史学分野の学芸員ですので、他分野の方は少し事情が異なるかもしれないということはご理解ください。

受験資格は大学卒が多い

正規職の学芸員として展示やイベントの企画、資料保存に関する業務に従事するには自治体の職員、すなわち公務員として勤務することになります。

もしくは、自治体から運営を委託された財団の職員(きわめて公務員に近い)になります。

これらの募集の受験資格はほとんどが一般行政職(事務職)と同じで学芸員も大学卒以上となっている場合がほとんどです。ですので、修士卒以上でないと受験すらできないかというとそうではないということになります。

なぜ修士卒以上が求められるのか

学芸員は調査研究の成果を展示や講演・執筆活動をつうじて市民に還元しなくてはなりません。

例えば歴史学分野であれば、発掘をしたり、文献史料を読み解いた結果、こんな新しいことが分かったと広く周知をして地域の歴史の新たな価値を創造していきます。

日本近世史であれば、古文書(くずし字)を解読して解釈をしたり、他の史料と付き合わせたりして研究を深めていくわけですが、こうした技術は学部卒まででは身につけることはできません。

また、学部の卒業論文と比べて修士論文は3倍の文章量書かなければなりませんし、その過程で読む史料の量も全く違ったものになります。ですので、文章力や史料解釈が学芸員の実務に耐えうるレベルまで高まるのが修士卒以上と考えてください。

学部卒で学芸員になっている人はいる

いままで業界でお会いした方々の中では、数は少ないですが学部卒で学芸員になった人もいます。

ただ再度強調すると学部卒で学芸員になっている人は少ないという印象です。そういった人たちの共通点としては、応募者が少ない小規模の自治体や博物館であるということです。

決して馬鹿にしているわけではなく、現実問題として自治体や財団の予算規模が大きいほど、文化財行政に多くの資金が回ってきますので、できることの幅が広がります。当然、こちらの方がスキルアップの機会が増えますので、さらに環境の良い職場に転職する可能性も増えてきます。

小さい博物館だと自分の専門外の仕事も回ってきますので、いわゆる雑芸員といった状態になりやすくなる一方で、職員が多いとそれだけ担当が細かく分かれますので、自分のやりたいことに注力できる時間が増えます。

以上まとめると、
①「学芸員になる」というだけであれば、学生時代から博物館でアルバイトをしたり、給与は少ないが非常勤で数年経験を積めば正規への道もなんとかある。
②勤めたい博物館への就職は難しくなる上、小さい博物館でも他の受験者に修士卒の人がいれば不利になる。
③学芸員として業務を遂行できる専門的知識を身に付けるには、大学院に進む必要がある。

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